アラスカへのあこがれ

一冊の本を読み終えた。

野田知佑さんの「ユーコン漂流」

気分によって脱線したせいでだいぶ日数が掛かったが、やっとユーコンを下ることができた。
野田さんは3年掛けて、2ヶ月を計3回、6ヶ月でユーコンを下っている。

アラスカというと、閉ざされ寒く雪と氷のイメージだけのような印象を持つかもしれないが、
実は自然はかなり豊かで手つかずのまま残されているところも多く(温暖化や開発の影響はあるが…)果てしなく広大な大地。
アラスカへのあこがれを持ち始めたのは数年前に読んだ星野道夫さんの本と写真集からによるものが大きかった。

星野さんの文や写真は美しい詩のようで、透き通った小川の水辺にある石に、濡れる苔をみるような、そんな透明感のある文章がアラスカ全体を映し出し、写真も絵画のようで圧倒される。

一方野田さんのユーコン漂流を読むと、リアルというか男らしい旅人、自由で美しい自然を満喫し、広大な自然と共に自分の心も豊かになれる。こちらも本当に素晴らしい本だった。あと犬好きの自分としても、野田さんの愛犬ガクの描写がなんともよくて、自分も犬を連れていつかカヌーでユーコンを下りたいと思った。実際、ユーコンの川岸には熊(クロクマ)が多く、よく熊の足跡があり、ガクが熊と決闘して、キャンキャン泣いて野田さんに逃げ込み熊を連れてきたり、熊よけに銃声をならしたり結構危険な感じもする。あと、上陸すると蚊の大群にやられることが多いらしい。蚊は世界の自然地域に行くと必ず悩まされるらしく、うわぁって感じもするが、カヌーの上では蚊に悩まされる心配もないと。確かに…

旅の終わりにベーリング海から17km奥に入ったエモナックにあるホテルの一階のレストランで、特大ハンバーグを注文して食べて感想をこう書いてある、、、

——この二ヶ月、いや、出発点から数えて六ヶ月間ぼくが食べ物を口にしたのは常に他人のもてなし、友情、仲間意識によってである。お金さえ払えばそこに何の気持ちのやりとりや交流もなく、自動的に食べ物が目の前にでてくる、というのが不思議な気がした。なるほど、貨幣経済というのはこうやって社会から「人間のつき合い」を奪っていくのである。——

貨幣経済の中でももてなしの心で接する人も少なくないが、往往にして今の「人づき合い」についてはネット社会の中で、急激に変わりつつあるし、疑問を感じることが多々ある。

自分も矛盾しているのがわかるんだが、最先端へのあこがれや、表現の探求で新しいことへの挑戦、デジタル化、ソーシャルによる繋がり、便利になることへの喜びなどは、本当に嬉しいし興味もあるし面白い。
ただ、全く逆のアナログへのあこがれ。あこがれというかなんだろう。清貧。

アラスカへのあこがれはそんな矛盾からきているのだろう。